一昔前の時代劇好きなら、「福本清三」と聞いて、すぐに顔と名前が一致しなくても、「エビぞりの切られ役」といえば、「ああ、あの人!」とわかると思います。TVドラマでも映画でも、この人がいなくては、殺陣に華がない。そんな役者さんです。「どこかで誰かが見ていてくれる」は、その福本清三の聞き書き本です。
時代劇に限ったことではありませんが、ドラマの出演者に名前が残るのは、主な役者だけです。その他大勢の名前のない役についた俳優の名前は残りません。それでも福本さんは、特徴のある切られ役としてファンがつきました。彼は「大部屋俳優」のプロなのです。インタビューでは、切られ役、死体役に徹した姿が語られていますが、そこにあるのは、主演の役者となんら変わることのないプロ意識です。そして、彼らがいて初めて主演俳優達が活かされてくる。殺陣事情を織り交ぜての裏話は大部屋俳優の誇りが詰まっていました。
成果主義が導入され、終身雇用制が崩壊しつつある社会において、目立たない仕事を実直にこなすことは忌避されがちです。しかし、そんな時代だからこそ、名のない役を黙々とこなしてきた福本さんのあり方が逆に評価されたのではないかと思いました。仕事を受けたからには、プロとしてやり遂げることは、当たり前であっても、現実は厳しい。とかく逃げ出しがちな現代社会への警告のひとつとして私は受け止めました。
![]() | どこかで誰かが見ていてくれる―日本一の斬られ役 福本清三 福本 清三 小田 豊二 集英社 2003-12 昭和33年、15歳で東映・京都撮影所に入り、大部屋俳優として、切られ続けて43年。死んだ回数2万回。代表作は「なし」。そんな大部屋俳優の、笑いあり、涙ありの感動ドキュメント! |


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